出版記念インタビュー『「話せる」子どもの育て方』12/10発売

転機は「面白くない」と言われたこと

著者紹介

野村絵理奈(のむら えりな)

アメリカ留学中、自分の意見をはっきりと表明する学生たちに刺激を受け、話し方のスキルを磨こうと帰国後にアナウンススクールに通う。元NHKキャスター、現在は話し方教室を主宰。

今回、上梓された書籍についてお聞かせください。

2005年から都内で話し方教室を運営しています。大人の方に教えていると、小さいころから話すことやコミュニケーションを苦手としてきた人が多いことに気がつきました。なぜだろうと考えたとき、日本の学校教育では「話す」分野があまりなく、知識をインプットすることに重きが置かれていると思ったんです。

グローバル化が進む現在、人前でプレゼンをしたり異なる文化の人とコミュニケーションを取ったりすることが求められます。それらは教育として幼少期から正しいトレーニングを積んでいれば身につけられるテクニックです。お子さんや保護者を対象に、そういった話し方の技術やアドバイス、練習、保護者からの働きかけ方などを盛り込んだ一冊となっています。

中学・高校時代はどんな生徒でしたか。

ただただ好きなことをしていただけの学校生活でしたね。勉強も所属していたバスケ部の活動もそれほど熱心ではなく、いわゆる「優等生」ではなかったと思います。

音楽や読書、旅行、絵を描くことが好きで、美術部にも顔を出していました。中学のころは美大に進みたいと思っていたし、両親も自由に好きなことをやりなさいというタイプだったので、興味のおもむくまま、やりたいことをすべてやりきった中高時代でした。

ただ、高三の夏の三者面談で「このままではどこの大学にも行けない」と言われ、そこから一念発起しました。それまで勉強にまじめに取り組んだことがなかったのでやり始めたら面白くて。やればやるほど模試の点数も上がり、達成感を味わいました。

今から振り返ると、興味のあることをやりきったからこそ、締めるときに締められたのかもしれません。

大学時代に転機が訪れました。

大学一年生でアメリカに留学しました。そこで自分が全然「話せない」ことに愕然としたんです。例えば友だち同士でステーキの焼き方について話していたときのこと。私はそれほど焼き方にこだわりがないのでただ話を聞いていたら、「自分の意見がない人とは話していても面白くない」と言われてショックを受けました。つまり「話せない」のは語学力の問題ではなく、自分に「会話に参加する」意識や、「物を考えて発言する」といったコミュニケーション力が足りないんだと気がついたんです。

そういったコミュニケーション力を上げようと、帰国後の二年生でアナウンススクールに通い始めました。元はアナウンサーになるつもりはなかったのですが、話し方一つで与える印象が変わる感動を知り、その道を究めようとアナウンサーをめざしました。

ご家族の反応は。

狭き門だと反対されました。
アナウンサー試験にも落ち続けていましたしね(笑)。一般の会社に就職するべきだと言われましたが、試験を受け続けてアナウンサーになれたし、今はアナウンサーではないけれども、夢を叶えてそこから派生する仕事をしているので、諦めないで良かったと思っています。

学生さんに伝えたいことは。

職業を選ぶにあたり、「叶うはずがない」と夢を捨てるのはもったいないと思います。いま思い描いている将来がそのまま実現するわけではないかもしれないけど、そもそも経験が少ない中学生、高校生、大学生のうちから将来像が見えている人のほうが少数です。中高のころは私も明確な将来像はありませんでした。色々やってみて、「これが好きなのかな」とか、一つひとつのステップの先にまた別の道が見えてくるのかもしれない。逆に、思い定めた道に向かってとことん進んで夢が実現する場合もあります。

いずれにせよ、とにかくやりたいと思ったことをどんどんやるのが良いと思います。青春は取り戻せません。「これもやりたかった」と悔いが残らないように過ごしてほしいですね。

最後に、大事にしていることを教えてください。

「つないだ手は一生離さないつもりでお付き合いする」というコミュニケーションです。自分の子どもたちには、今の付き合いだけじゃなく幼稚園や小学校時代の友だちを大事にしようと伝えています。損得勘定なく新旧問わない付き合いを大事にすることで、自分を応援してくれる人生豊かな出会いに恵まれると思っています。

※転載元:広報誌「秀明」/秀明大学出版会

四六判並製・216頁
1,200円+税(1,320円)
秀明大学出版会