KEE’S子どもコミュニケーションスクールの教育で、最も大切にしていること。それは、「1歩前に出る」力を育てる事です。大人に何かを命令されたり、やらされたりという事ではなく、自らの判断で、勇気を出して「1歩前に出る」力です。
子どもスクールでは、日ごろ練習したスピーチを披露するため、年に一度、大きな会館を借り切って100名程の前でスピーチをする機会を設けています。4歳の子どもが、舞台に上がって一生懸命スピーチをしたり、6年生ではオックスフォードの入試面接で実際に出題された難しい問いをテーマにした5分以上のスピーチに挑戦する子もいます。
この晴れの舞台で、最も緊張するのは実は子ども達ではなく保護者の皆さんです。「ちゃんと最後まで言えるだろうか」と期待と不安でハラハラしたり、少しでも絶句したら、怒りを必死にこらえていたりと、その表情は様々です。
そういう日ですから、私は冒頭の挨拶で、必ずこのようにスピーチするようにしています。「もし、途中で無言になってしまったら、その時間は、子ども達が自分で一歩を踏み出すために必要な『間』だと思ってください」と。子供たちは、言葉に出来なくても、小さな心の中でいつも葛藤し、成長しようとしています。その力は、何より力強く、私たち親は、その背中を見守り支えることくらいしか、本当は出来ないのです。
スピーチは、自分を成長させるための、分かりやすく効果的なツールです。大人も子どもも、人前で自分の言いたいことを伝えるということは、自分という人間を相手にさらけ出し、評価される作業です。だから、いくつになっても、どんなに経験を積んでも、スピーチは緊張するものなのです。私は、子ども達に、スピーチを通して、自分を試し、大きく成長してほしいと願っています。いや、大人も含めて、自己主張する事を恐れず、挑戦し続けてほしいと思っています。
「怖いと思ったら1歩前へ」。実は、私は今でも、スピーチをする前に、こうつぶやいています。
エグゼクティブスピーチトレーナー 野村絵理奈