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話し方教室 KEE’S 論理へのネガティブイメージ

15年ほど前、起業して間もない頃、ある大企業の社長のスピーチトレーニングをしてほしいと依頼を受けました。世界的に有名な国内のIT企業。誰もが知る社長のスピーチに携われると、期待に胸を弾ませて、企業の人事部を訪問し、開口一番に言われた言葉は、

うちの社長は口下手なんだけど、そこが『朴訥とした良さ』でもあるんだよね。スピーチを習ったら、その魅力が半減しない?

でした。スピーチに関しての意識が低い15年前の話なので仕方ないとは思いますが、口下手なのを「朴訥とした良さ」という言葉に変換してしまうのは、ビジネスの場では言語道断。ましてや世界的大企業の社長ともなれば、なおさらです。ただ、若輩者が、そう言い返すことができず、その質問にはこう答えました。

「朴訥とした良さは、社長の人間性であり、スピーチは技術です。スピーチによって、社長の魅力はもっと多くの人に伝わるようになります

その後、スピーチによって、話すことに自信を持てるようになったその会社の社長は、「朴訥とした社長」ではなく、「社員を牽引する」魅力あるリーダーと呼ばれるようになりました。

この社長の例にみられるように「論理的」というワードを聞くと、日本人はどうも「事務的」「冷たい」というイメージを持ちやすいようです。

論理的に考え、伝える最大のメリットは言うまでもなく、「要点を端的に伝えられる」ことです。「言いたいことを言葉で伝える」方法を身につける事で、世代や価値観を越えたコミュニケーションが可能になります。ただ私は、論理的話法を身につける一番のメリットは、自分の本当に言いたいことを見つける、つまり「真意にアクセス」する力を伸ばすことだと思っています。

例えば、「スポーツ選手の年俸は高いと思いますか?」という問いに、即座に答えることが出来るでしょうか?実際、アメリカなどでは小学生でも、こうした「正解のない問い」に対する意見を持っています。

小さい頃から、自分の考えをオリジナリティあるものに高め、人前で発表することを学校教育の中で訓練されていると、自分の価値観や考え方がはっきりしてきます。そして将来、交渉の場などでも自己主張できる大人へと成長できるのです。真の意味で論理的であるということは、伝える力があるだけでなく、自分の価値観や意見をもって、人を説得する力があることだと考えています。

KEE’S代表 エグゼクティブスピーチトレーナー 野村絵理奈

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